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【葛葉ライドウ】長老「近づくなよ、絶対近づくなよ！」【アバドン王】

前章までのあらすじ
秘密めいた茜という名の若い女性が持ってきた
「弾捜し」の依頼には別の顔があった。
蟲を使う暗殺集団、第八巫蟲衆の一族、
槻賀多家の「婚礼の儀」を巡る一悶着。

槻賀多家の神と結婚する妹を「救う」ため
第八巫蟲衆の逆賊となった兄。そして
その兄を気づかい、秘密裏に説得するため
兄の所在を突き止めて欲しいという依頼。
それが茜から頼まれた、「弾捜し」の真相だったのだ。

弾から遠ざけるため、槻賀多家の総意で
茜は極秘で帝都に送られていた。
しかし弾は、茜がかくまわれていた
成田邸を突き止めてしまう。
ライドウの活躍もあって弾は退けたが、
茜の居場所が弾に割れてしまう。

本人の希望もあり、弾からの護衛も兼ね
ライドウ達は茜を送ることになった。


槻賀多村　槻賀多家
「ただいま戻りました。
……お父様」
帰還した娘に喜ぶ長老。
「無事で何よりじゃよ。
おめぇにもしものことががあったら……。
ワシぁ、あの御方にぃ……
申し訳が立たんからの」
2人のやり取りを、鳴海さんは
黙したまま見つめていた。
「再び我が家の敷居をまたげたのも、
ライドウさんのおかげです。
ライドウさんが成田叔父様のところで、
兄を追い返してくれなかったら……」
茜さんの言葉に長老が、
「……その話ぃ、詳しく聞きたいの。
お願いできるか？ ライドウ殿」
ライドウはこれまでの捜査状況を
長老に伝えた。
「……太介も元は名うての巫蟲師じゃった男。
あるいは弾を抑えられるかとも思ったが……。」
マジでかΣ(ﾟДﾟ)
全然そんなふうには見えなかったよ!?
ああ、でも無駄にデカイ態度と小物臭は
巫蟲師のそれだったなぁ……。


「聞きたいことがあるんですよ。
秋次郎さん」
今まで沈黙を守り続けていた
鳴海さんが、おもむろに口を開いた。
「ライドウの話じゃぁ、弾さんは茜さんを
「助ける」って言ったそうなんです。
「アバドン王」ってのになってね」
「アバドン王……？
さてぇ……見当もつかんわい」
「……俺には解せないんですよね。
単に結婚の邪魔をしようってんなら……
禁断の運喰い虫を持ち出したり、
アバドン王なんてのになろうとしたり……」
鳴海さんは淡々と続ける。
「……これ、思いつきなんですけどねぇ。
弾さんの一連の行動って……
茜さんのお相手の方に問題があるのでは？
……「天斗さま」でしたっけ？」
茜さんがその言葉に顔を曇らせる。
「どんな方なんです？
天斗さまって……」
長老が重い口を開く。
「あんたらにゃ、弾捜しのことやぁ、
今回の茜のことで世話んなったがよ……。
……よそ者が気安ぅ「天斗」などと
触れ回ってくれなさんな……。
二度と天斗さまのこたぁ
口にせんでつかぁさい……」

「あ、あの……」
重い空気の中、茜さんが
遠慮がちに口を開いた。
「お父様……お話はそれくらいにされては？
お二人とも長旅でお疲れでしょうし……。
鳴海さん、ライドウさん。
福禄荘に部屋を手配しておきました。
こんな田舎の村ですけれど
観光にでもいらっしゃたと思って……」
長老が茜さんの言葉をさえぎる。
「……茜の婚礼の儀までぇ
あと三日じゃ。
茜の護衛を引き受けてくださったんじゃ。
村ん中ぁ好きに歩いてくれてかまわんが……」
長老は忠告する。
はいはいなんですか。
「ひとつだけ言っときたい……。
天斗樹林っちゅう森の奥に
百足ヶ路（むかでがみち）がある……。
……いいな？ 百足ヶ路だけにゃ
近づかんでつかぁさい……絶対にじゃ。」
つまり行けというわけですね、わかります。


福禄荘　客室
「……なぁ、ライドウ。
槻賀多さんちから帰ってくる途中でな……」
おお、なんですか鳴海さん。
「ちょっと思ったんだ……今さらだけど、
弾って巫蟲師だろ？ かなりの使い手の」
そうですね。ウザさパネェですけど。
「茜さんの婚礼がそんなに嫌ならさ、
弾も暗殺が得意な巫蟲師なんだ……。
茜さんの婚礼の相手、
……こっそり殺しちゃえばよくない？」
ちょwww物騒なwwwwww
でもそうですよねー。
「……だろ？ 方法としては乱暴だけど、
それが手っ取り早いし確実だってんなら……。
普通、考えるよな。
俺も弾の立場なら絶対に考える」
ここで鳴海さんは黙り、
そして再び口を開いた。
「……これ、秋次郎さんや茜さんの前じゃ
言わなかったけどさ……。
きっと、茜さんの結婚相手……天斗さまに
弾が手出しできない事情があるんだ。
だから弾は「アバドン王」ってのに
なろうとしてるんだと思う。
なぁライドウ、俺は……弾の言う
「アバドン王」に脅威を感じてるんだ」
どうしたっていうんですか鳴海さん。
「弾の行動の目的は茜さんを「助ける」ため
「アバドン王」になること……。
……きっと運喰い虫を持ち出して
帝都にばら撒いたのも、その一環なら……。
……弾の言う「アバドン王」ってのが
帝都の脅威になるかもしれんてことだ」
鳴海さんの推理をぬこは聴聞する。
「弾がアバドン王を目指す原因が……
天斗さまなんだとしたらだ。
……天斗さまの素性から、
アバドン王のことってわからないかな？
弾の目的を知って所在を掴むうえでも
帝都への脅威を未然に防ぐうえでも……。
……ライドウ。
天斗さまのことを当たってみてくれよ」
や、やりますけどぉ……。
その間鳴海さんはなにやんの？
ま、まあ今回の鳴海さんならきっと
他の仕事を……！
と、ここまでずっと沈黙していたぬこが
ようやく口を開いた。
「名うての巫蟲師である弾が目指す
アバドン王とやら……。
そして名うての巫蟲師である弾ですら
手をこまねく天斗さま……天斗か……。
アバドン王と天斗。
いずれも弾に深い関連がありそうだな……」

「あぁ……そう言えば、ライドウ。
秋次郎さんが……ほら……
天斗樹林の百足ヶ路のことを
話していたろう？ 覚えてる？」
ええもちろんですとも！
「俺たちに「近づくな」って言ってたけど……。
天斗樹林の百足ヶ路……何かあるのかな？」
ありまくりだろ。常識的に考えて

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