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【葛葉ライドウ】こっち見んな【アバドン王】

筑土町 業魔殿
大コウリュウ便利だなぁ。
電車賃いらず！ヽ(*´∀｀)ノ

ライドウは、これまでのことを
ヴィクトルに伝える。
「……おぉ！死の星の輝きを背負う悪魔！
あのアマツミカボシを倒したと!?
さすがに我が輩が見込んだサマナーだ。
今後ともよろしく頼まれてくれよ？」
いえいえこちらこそ(´∀｀)
「さて、アマツミカボシが
おぬしによこした宿魂石を使い……
錬剣術でアポリオンとやらを倒す、
とっておきの一振りを生成してやる。
……宿魂石はいただいておくぞ」
ライドウはヴィクトルに
宿魂石を渡した。
「なるほど、アポリオンとやらを倒す刀……
練気刀を使えば生成できるようだな。
死の星をつかさどる悪魔の力……フフ。
それに再生を繰り返す化け物の皮膚……。
ぶつかれば、どちらが勝るのかな……？
興味深いな……興味深いぞ、葛葉！」
練気刀なんか持ってたっけ……？(；´Д｀)
あ。
そういや弾から貰ったのがあるじゃないか。
持ってたってしゃーないと思ってたけど
役に立った。
弾ありがとう！


桜田山
とりあえず鳴海さんのところに
戻ってきたけど……。
おーい鳴海さーん。
「おぅライドウ。
どこ行ってたんだ？今まで……」
ライドウはこれまでのいきさつを
鳴海さんに話した。
「そうか……あの攻撃の効かない
アポリオンを倒せる武器か……。
じつはアポリオンの件で、
さっきから風間刑事がな……
お、噂をすればなんとやらだ……」
風間刑事が2人に向かって歩いてくる。
「……ったくよぉ、お偉いさんに
掛け合ったの、俺なんだぜ？
なんだって軍の奴らってのは
あぁも高慢チキなのかねぇ……」
「どうしたんです？風間刑事。
ご機嫌ななめじゃないですか？」
鳴海さんが訊ねる。
「どうもこうもねぇよ、鳴海ちゃん。
ライドウちゃんも聞いてよ……」
風間刑事はアポリオンの件で
陸軍の出動を上層部に要請したらしい。
しかしそれを受けて桜田山に陸軍が
来たのはいいが、「民間人は邪魔だから
帰れ」とあしらわれたという。
「あらま……お気の毒に」
「奴ら、この先でふんぞり返ってるよ。
気分悪くなるから近づかない方がいいぜ？」
ふーん。
でもそういわれると近づきたくなるのが
人の性。(・∀・)ﾆﾔﾆﾔ
ねぇ鳴海さん。
「できることなら……陸軍の皆さんとは
あまり関わりたくなかったんだよな……」
おや。なんでまた。
「……前に話さなかったっけ？
俺……昔、陸軍にいたんだよ」
ああ、そういや前作でそんなこと言ってたような
そうでないような。
「秘密将校……まぁモダンに言や
『スパイ』ってやつ？それやってた」
え？
な、なにそれかっけぇ!!!!(*ﾟ∀ﾟ)=3
諜報員じゃなくて将校ってのがまた
かっけぇ!!!!
「まぁ細かい話は……はしょるけど、
ある任務の途中で、俺……
世界の歴史ってのが、ひと握りの
お偉いさん都合で造られてるって……
知っちまったんだ……それでこう……
将来に希望を持てなくなってさ……。
……あぁ！やめだやめ！
昔話でしんみりしてる場合じゃないぜ？
アポリオンの恐怖を残したまんまだ。
気は抜けないぜ……？」

「……なんだキサマは？」
陸軍兵がライドウに気づく。
「ここは危険区域に指定された。
民間人は邪魔である……帰れ」
「まぁまぁそう目くじら立てるなよ。
若人が興味本位で来ちまったんだろ？」
もうひとりの陸軍兵がなだめた。
「大丈夫だって、俺がいりゃあ、
危険区域だろうがなんだろうが……
幸運のお守りがあるもんね。
見なよ、これ……」
って
ちょwwwwwおまwwwwwwww
ぬこは陸軍兵が取り出した赤い
虫かごに驚愕する。
「なんだそれは？」
「前に萬年町でもらったんだ。
幸運を運んでくれる虫なんだと。
だから、これ持ってる俺と一緒にいれば
なんの厄介事も起きな……」
「……む!?」
……来ちゃった(；´Д｀)
ある意味ツイてるけど。
「で、出たな……！
これが報告にあったバケモノ……！」
「うぅ……嘘だろぉ？なんでこっちに来る!?
俺、虫を……幸運なんだぜ？俺……！」
その虫のせいです。
ぬこが叫ぶ。
「来たぞ！
アポリオンが来た……！
印形の儀を乗り越え、
アマツミカボシを退けた武勇……。
今のうぬならば
アポリオンにも引けは取るまい。
お目付け役としてうぬに賭けてやる。
……行くのだ、相棒！」

アポリオンは、
ライドウが装備した刀を見つめている。
突然、ライドウの刀が輝き出した。
刀の波動がアポリオンを弱らせる。
「おお、
アポリオンが苦しんでいる！
ヴィクトルの言を借りれば、
奴の回復能力を無効化したという事か？」
と、ぬこ。
弱点あるのかな？
まずは弱点調査。
お、電撃弱点か。
じゃあメンバーはクー・フーリンと
ティターニアさんで。
ああ、でも弱点突かなくても
そんなに強くないわ。

「やるではないか。
お見事な手並みだ。
それに引き換え、あいつらは……」
ライドウの背後で
陸軍兵らが言い争いを始める。
「キサマぁ！なにが『幸運』だぁ!?
戯言をぬかしおって!?
なぜ『幸運』のところに
バケモノなんて『不運』がくるか!?」
「じょ、冗談じゃない！
俺だって被害者だ……サギだよ！
なにが『幸運の虫』だぁ！
い、いるか！こんなもん……！」
そう叫び、虫かごを捨ててしまう。
ぬこが捨てられた虫かごに歩み寄る。
「運喰い虫を
捨て置くわけにも行くまい。
持っておけ。
うぬの戦力にもなる」

「おぅおぅ陸軍さんがそろいもそろって
『運』だのみだったってのかい……？
情けないこったねぇ……」
風間刑事の声に振り向けば、
鳴海さんたちがこちらに向かってくる。
「見てたぜ、ライドウ。
お疲れ様……やったな。
もうアポリオンは怖くないんだな？
これでひとまず
帝都の連続殺人事件は幕を降ろ……」
言いかけて。
「なんだぁ……？」
どこからか聞こえた音に
訝しむ鳴海さん。
「今のは……巫蟲師の指笛！
巫蟲師が……近くにいるのか？」
気を張り詰めさせるぬこ。
「どぉこ見てんだぁ……？
オレぁこっちだぁ……こっち見ろぉ。」
その声に皆が一斉に振り返る。
「……おい！ライドウ、あそこだ。
ラヂヲ塔の方に……」
鳴海さんがラヂヲ塔を指し示し、
ぬこがうめく。
「や、奴は……!?」
そこには、ラヂヲ塔を背に
赤い面の男、槻賀多 弾が
屹然と立っていた。
「ここで会えるたぁ……やっぱぁ、
オレってばぁツイてるぜぇ。
……今日は天斗面を被って正装だぜ。
なんてったって祭りが始まるからなぁ。
『おめぇ、誰だ？』とか思われてたらぁ
笑えねぇからぁ、てめぇから名乗るぜぇ。
槻賀多 弾……いや、アバドン王じゃ。
今日からオレぁアバドン王って名乗るぜ。
イナゴ……アポリオンが出たんじゃ！
あいつの言った通りじゃ……！
もう天斗さまなんて怖くねぇぞぉ？
村の衆も茜もぉ……！
みんなで万歳三唱だぜ！
ちょい待ってろ……ライドウ。
今までの借りぃ……！
アバドン王になったら、
今度こそ泣かしてやるからな！」
そう言い捨てて
弾はラヂヲ塔の方に走っていった。
「お、おい……なんで弾がここにいるんだ？
堅固牢を抜けてきたってのか!?」
うろたえる鳴海さん。
「ラヂヲ塔に……
一体、なにがあるって言うんだ……？」

空に開いた赤い穴を見つめる弾。
意を決し、指笛を吹く。
赤い穴の異変に帝都中の人々が
足を止め、空の穴に釘付けとなった。
そこから現れたのは、無数の巨大な
黒い虫。
哄笑がラヂヲ塔に響き渡った。
黒い虫たちは弾に襲いかかろうと
ラヂヲ塔に向かって体当たりをし始める。
弾は虫たちを支配するため指笛を鳴らすが
効果がなく、やがて虫たちは
弾に興味をなくし、帝都中に散ってゆく。
虫たちは帝都を蹂躙する。
弾はその様子に力なく膝をついた。
その傍には、一体いつの間に現れたのだろうか、
金髪の青年の姿が。

「……う、嘘だろぉ？
あんな……
アポリオンが……
このオレの指笛ぇ無視してぇ……
帝都で暴れるだぁ……？
な……なんかの間違いだろぉ……？」
動揺する弾とは対照的に
金髪の青年は平然としている。
「『全てを破壊する蟲』だ！
天斗の一族の『かか様』の使い……
アポリオンを仕切って
天斗さまより偉くなってぇ……
アバドン王になってだ！
槻賀多村の衆や……茜をよ……
助けてやりてぇってよぉ……！」
黙したままの青年。
「なんで……イナゴのアポリオンが……
巫蟲師のオレの言うことぉ聞かねぇ……？
オレぁ……
オレのアバドン王は……？」
そこへライドウ達が駆けつける。
「おめぇら……！」
「ど、どうなってる……？
アポリオンが……それも大群でだ！
空の赤い穴から来やがってる……！
あれは、なんなんだ？
お前となにか関係があるのか……弾!?」
鳴海さんが弾を問い詰める。
「そ、それぁ……」
弾は項垂れて黙ってしまう。
「……また会えたね」
金髪の青年がおもむろに口を開いた。
「……今日は君たちにとっての
記念日となるだろう。
君たちが『不運に喰われる日』と呼ぶ日が
どうやら到来したようだ……」
「不運に喰われる日だって……？」
鳴海さんが反芻する。
「……この光景を見た君たちには
話しておかねばならないだろう……。
……この世界とは異なる次元に
人のうちに宿る負の感情……
『絶望』だけが渦巻く世界があるらしい……。
人々が『神の言葉』を語った書物に
『底無しの淵』と記された世界……
人の内に宿る負の感情の世界……
それが深淵世界なんだ」
「深淵……世界……？」
聞きなれない言葉に弾が顔を上げた。
「そう……深淵世界だ。
そして帝都の空に見える赤い穴は
深淵世界の門と呼ばれているものだ。
さて……君に聞きたいことがある」

青年はライドウに訊ねる。
「……深淵世界の門とは
『神の言葉』を語った書物でいう……
底無しの淵のことだ。
そして底無しの淵とは……
人々が神……すなわち。
神が創った、この世界への
絶望が『鍵』となり開くらしい……。
……不運による災厄に見舞われ続けた
帝都の人々は……絶望してしまったのだ。
神が創った……この世界にね。
帝都の人々は神の絶望したのだ……。
運喰い蟲が帝都の幸運を喰ったことを
『きっかけ』にしてね……」
その青年の言葉に弾がうつむく。
「……神への絶望を『きっかけ』に開いた
深淵世界の門より飛来する……アポリオン。
そのアポリオンが
帝都の人々に苦痛を与えている……
アポリオンの
帝都の人々への行動を……
君ならどう見る……？
アポリオンとは
神の絶望してしまった人々への報い……
神に唾を吐く人々を一掃し、
神の世界に将来をもたらさんとする……
……怒りの行動なのか。
あるいはアポリオンとは
神に絶望してしまった人々への救い……
その力を以って神の存在を人々に示し
神の世界に将来をもたらさんとする……
憂いの行動なのか……
君は、どちらの行動だと思う？」
え？
2択ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?
正反対に見えて
目くそ鼻くそな2択のような……。
神の怒りか憂いかどっちかってこと？
……怒り、かな。
こんなんが救いであってたまるか。
まだ怒りの方がまし。
「……そうか。
君は、そう考えるのか。
これまでの君との出会いと
そして先の君への問い……
……やはり今日は記念日となったね。
君のことが少し分かった気がするんだ。
どうやら君は……
自分の気持ちに正直でいられるが、
それゆえに周りに敵を作りやすい……。
……そんな生き方の者のようだ」
重々承知しておりますよー。
それを鉄の自制心で自重してるから
超ストレスよ。
「……フフ、ならば今の君には
これを渡しておくよ……」
ソーマ貰った。

「……ねぇ、弾」
青年は項垂れたままの弾に声を掛ける。
「君は喜んでくれていいんだ。
帝都の、あの光景は……
……君が望んだ光景なんだからね」
「な、なんだとぉ……!?」
その言葉に顔を上げる弾。
「深淵世界の門が開いている……。
間もなくこの世界が絶望に包まれるぞ……。
この世界を絶望で満たす
『きっかけ』が降りてくるからね……」
「なんだと……？」
鳴海さんの顔が険しくなる。
「深淵世界の門をくぐって
神が作ったこの世界に降りて来る……。
神が創ったこの世界の人々すべてが
……将来に絶望する『きっかけ』だ。
それが弾……君の望んだ……
『アバドン王』なんだ」
「な、なにぃ……!?」
弾はアバドン王の真実に驚愕する。
ぬこもそのことに驚きを隠せない。
弾が叫んだ。
「アバドン王が……
将来に絶望する『きっかけ』だと……？」
「……じょ、冗談じゃねぇ！
オレがやりたかったこたぁ……
オレが運喰い虫を使ってぇ
やりたかったこたぁ……！
帝都を……こんなメチャメチャに
ぶっ壊すことなんかじゃあねぇぞぉ!?」
「弾……」
その悲痛な叫びに鳴海さんが言葉を
漏らす。
「オレのアバドン王が……
そんな……
そんなぁ……ちげぇよぉ……
オレの……アバドン王は……
アバドン王はぁ……」
「……皮肉だね。
人々が『神の言葉』を語った書物……
その言葉をなぞった弾の行動が……
人々の将来を掴み取るだなんてね。
そして弾は自分の将来を掴もうという行動
……その行動で人々の将来を掴み取った。
……そのことに責任を感じ、
絶望し始めている……。
……なるほど。
これが『行動の責任』なのか」
青年は淡々と語る。
「……最後に」
こっち見んなΣ (ﾟДﾟ;）
「弾の『希望』に満ちた行動が……
帝都に『絶望』をもたらしたように……
君の行動に『希望』を寄せた者が
君への『絶望』となるのかもしれない……。
『憂い』た顔で君の前に現れ
君の行動に希望を寄せる者……。
彼の者の『怒り』の顔に……
気をつけたまえ。
……君の将来が絶望に包まれぬように……」
そう言うと青年は文字通り消え去ってしまう。
「ちょ、ちょい……！」
弾が慌てて声を掛けるもその姿はすでにない。
「待ちやがれぇ……！
オレの……オレのアバドン王はぁ……？
なぁ？待ちやがれよ……なぁ？
待てっつってんだよぉ……
……待って……つかぁさい……よぉ……
オレぁ……ど、どうすりゃあ……
あぁ……」
弱々しい弾の声が虚しく響いた。

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